第14回工業技術研究会
日時 昭和63年10月11日( )午後 時〜 時
場所
出席者数 名
情報交換
講演 ”再び、内浦湾を巡る夢のデザインについて”
潟Aルファ技研、潟Aルファ水工コンサルタンツ
谷本 彰 氏
<要旨>
1. はじめに
内浦湾々口の沈埋トンネルは道央と道南をより太い動線で繋ぐと共に時間的な短縮を図り、内浦湾周辺の恵まれた自然、そして豊かな資源を互いに利活用して、全域の活性化を強く期待する総合的プランであり、ここで述べるのは大別して次の通りであります。
○湾口沈埋トンネル
○多目的海中塔屋 (仮称、カルチャーセンター)
近年、急速なリゾート地域開発が盛んでありますが、この構想には海洋を含め水と緑が一杯の農山漁村での体験観光と、既設の観光地を連携し一体化しての、壮大とも言えるリゾート地域計画です。
2. 湾口沈埋トンネル
湾口沈埋トンネル部分の将来に向けての維持管理については、かなりの問題があることが予想されますが、適切な解決策はあると考えるのであります。
そうすると、大規模な第3セクターを設置して、事業実施と併せて将来に向けて維持管理を受け持つことにするのも一法です。
湾口を直結する構想は一つの夢でありますが、期待できる効果が大きいと考えられることから、これまでに橋梁架設案、正規のトンネル案のほか高速フェリー運航案など、様々の提案がなされてきました。
しかし、湾口の海底地形、地質の問題とか、建設の費用及び維持管理費の関係、また気象条件からくる安全保守管理の問題、さらには観光価値の視点からみると、私見としては以下の理由から沈埋トンネル構想を最良案と考えるのであります。
○多目的機能を有するトンネルとして一括施工することにより無駄が少ない。
○気象条件に左右されず、保守点検、維持管理が容易である。
○漁業関係者のご意見を拝聴しなければならないが、湧昇流による水産面での効果が期待できないか。
○一体として建設される塔屋(後述)と相乗効果を発揮して、内浦湾域一帯の観光資源的価値が高まり、リゾート施設としての利用が期待できる。
○塔屋も含めて、鋼材を始め多様な資材を使用することから、室蘭圏、函館圏などへの経済的波及効果が期待できる。
また、海中の景色を眺望する海底観光ができるよう、残像効果を活かした超強化ガラス窓の連続設置を検討しているところであります。
この場合、設定場所によっては水深及び透明度の関係から光線が十分に達しない所では、昆布などの植生も覚束なく魚類の遊泳も見られず海底景観としての価値がありませんので、これに対応するために、海上に大形集光器を設置して光ファイバーで太陽光線を海中に送り、沈埋トンネル付近で発光拡散させますと、昆布類の植生が可能となって魚介類の生息を促すことになり、海底観光の価値が生まれることになります。
3. 多目的海中塔屋
この塔屋は、湾口沈埋トンネルのやや中央に建設するもので、主な機能は給排気であります。トンネル延長が約30kmですから、高速車両の通過によって生ずる風圧の緩和が是非共必要と考えられるために設けるものであります。
折角に設置するのであれば、多目的な利用を考えるのは至極当然と言えましょう。つまり、交通、観光、生産、学習 など諸々の機能を具備することが、海中塔屋として好ましいと思うのであり、次のような施設が考えられます。
○湾口駅、交通コントロールセンター、大駐車場など
○観光ホテル、海中レストラン、海水浴場、屋上展望レジャーランドなど
○国際大会議場、各種カルチャー用会場、各種リハビリセンターなど
○海洋科学研究センター、潜水訓練センター、水産技術研修センターなど
○増養殖振興センター、大規模近代化養殖基地、養殖管理センターなど
○観光潜水艇発着基地、大海中すべり台、深度別水族館など
多目的海中塔屋は、その呼称の通り様々の機能を有する施設でありますが、以下のようなゾーン分けをしており、各ゾーンについてその内容を述べますと次のとおりであります。
@交通機構ゾーン
交通コントロールセンター、湾口駅舎、プラットホーム、駅ロビー、商店街、休憩待合所、大規模駐車場、エレベーターロビー、海中管理艇(観光潜水艇)基地、エンドレス海中観覧者(及び遊歩道)基地、塔屋専用自動車道路など
Aカルチャーゾーン
潜水訓練センター、水産技術研修センター、深度別水族館各種カルチャー教室、増養殖振興センター、大規模近代化養殖基地など
B管理等多目的ゾーン
塔屋総合管理センター、各種飲食店街、管理職員休眠所、食品貯蔵庫、管理機材倉庫など
Cホテルレストゾーン
和洋式各クラス宿泊施設、貸席、展示会場、茶室など
Dメデカルゾーン
各種医療施設、リハビリセンター、温泉ホールなど
E観光イベントゾーン
ウォーターフロント、更脱衣ルーム、シャワールーム、立体艇庫、イベント広場、ワイド回転劇場、プレイランド、多目的ホール(大中小)、散策遊歩道広場、喫茶レストランプラザ、ショッピングプラザ、展望台広場、自由広場など
4. おわりに
今を去ること5年前、「開発こうほう」1985ー5週刊238号の紙面をお借りして「噴火湾を巡る夢のデザイン」と題して、その大要を述べさせて頂いたのでありますが、反応は今一つといった感じで寂しい思いをしたものでした。実現性も覚束ない構想は、アイデアと言えないことを思い知らされたのであります。もっとも当時は青函トンネルの有用性についてもかなり疑問視する向きが大勢を占めていた情況下にあり、完成の暁には如何に利活用できるかについて、一般からアイデアを募ったりしたことがあったことは未だ記憶に新しいところであります。
一方、鉄の街、室蘭の衰退を目のあたりにして、その対策の急を告げる声が日増しに大になっていた時期でもありました。当時、北海道開発局におきましても、内浦湾周域の活性化を中心に、沿岸開発整備事業推進調査を行うなどして諸々の課題をとりあげて議論されていたことは、皆さんご承知の通りであります。
以来、北海道開発局と関係市町村が中心となり、内浦湾の活性化を考える懇談会、協議会、シンポジュームなどが次々と開催され、発展計画についての議論が重ねられていることにつきまして、心から敬意を表するものであります。
今回は、以前に「噴火湾を巡る夢のデザイン」に概略を数項にわたって記述した内容について、少し具体的に記述したものであります。
|
|
|